第2回「東京 Food-trip アフリカガンビア篇」レポート

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 30年以上前のことになる。東アフリカ3国を2度ほど訪ねた。そのときの強烈な印象が今でも脳裏にあり、「アフリカ」という語感に惹かれ参加した。以下にレポートする。

                    [早稲田大学料飲稲門会・常任理事 遠藤博之]

浜松町アフリカ料理店「カラバッシュ

 カラバッシュは西アフリカのマリ、セネガル、コートジボアールのメニューを中心にした、数少ないアフリカ料理店の一つ。席数50ほどに個室とバーカウンター、店内はアフリカ一色のインテリアである。単にレストランというだけではなく、アフリカ文化を紹介する空間として運営され、週末にはアフリカ音楽のライブも行われている。ちなみに店名カラバッシュは、植物学上アフリカが原産と言われる「ひょうたん」の意味。原種のアフリカひょうたんは日本のそれとは似ても似つかない、大から小まで様々な容器や日用品に活用されるすぐれモノである。

ピエール・ベアイ氏のガイダンス

 ベアイ氏はICUに留学のためガンビア共和国から来日した。プロフィールは料飲稲門会サイトでご参照を。画像を映しながら「国の概要、産業・生活・文化、主な料理」などが約30分間紹介された。西アフリカに位置するガンビアは、ガンビア川の大西洋河口から内陸へ約300kmの沿岸に沿った細長い国土で、大陸55ヵ国中最小の国だ。1965年独立、人口約220万人、イギリス連邦の一員で英語を公用語とする。 さて、主題の料理である。ベアイ氏は国軍の文官で「自分は料理が上手だ」と自慢していた。紹介された5つの料理は、総じて複数の野菜・豆類や肉・魚をトマトソースやピーナツ油で煮込み、香辛料を加え、蒸した米や雑穀にぶっかけて食べる料理である。「味・香り」は想像するしかない。紹介された5つのレシピには、Benadin=Wolf族、Domonda=Mandinka族、Mobahal=Jala族、Yassa=Wolf族、Cherreh=Fulani族と部族名がついていた。小さな国でも10近い部族が共存しており、まさにアフリカの多様性を端的に象徴している。地域、生活習慣の異なる部族食文化が、長く複雑な歴史の中で脈々と受け継がれているわけだ。

試食メニュー

 前菜にブッサというコロッケ、蒸したチキン、ネムという春巻き。コロッケの餡はヤムイモの粉を団子状にしただけ、柔らかく天然の味だ。できれば熱々で食いたかった。チキンの蒸し具合は上々、春巻きはう~ん、というあたりか。トマト味のシチュー、野菜を煮込んだスープ・カンジャ、骨付きのチキンを玉ねぎなどと煮込んだチキンヤッサに、おそらく蒸したであろうクスクスやゴハンが別皿で給された。スープ・カンジャのねばねばはオクラであろうか。想像していたより香辛料やハーブの香りは強くなく、何かを主張する強烈な味覚はなかった。煮込み料理はもっと熱いままで食したほうがいいのではないか、次の機会に試してみたい。

アフリカ食文化について

 広大なアフリカ大陸の食文化をひとくくりで語るのはむずかしい。食文化情報も決して多くない。サハラ砂漠以南のいわゆるブラック・アフリカ(東・西・中央・南アフリカ)は、北の地中海沿岸の気候・民族・文化とおおきな差がある。ブラック・アフリカ諸国相互にも多岐・多様な違いがあり、アフリカを理解するとは、まさにその多様性を探ることである。

 さてガンビアは、サハラ砂漠の最西端、大西洋に面したセネガルの南部に包み込まれるように位置している。セネガルはフランスの旧植民地で、あの「パリ⇒ダカ」のゴール・首都ダカールがある国だ。セネガル料理は西アフリカで最も洗練された料理と言われ、パリにはセネガル料理レストランが結構ある。ガンビア料理は似ているのではないか。このセネガルを軸に、各地をフィールドワークした言語・民俗学者の小川了は、アフリカ食文化の特徴を次の3点に要約している(『世界の食文化⑪ アフリカ』農村漁村文化協会)。

 ◎主食とおかずの区別がない(蒸した雑穀やコメに煮込んだ料理をぶっかけて食べる)

 ◎食物を咀嚼しないでのみ込む(食材は臼に入れ杵で搗き、煮込んだものが多い)

 ◎熱くして食べる(油で熱した料理でも器用に4本指でまとめて口に流し込む)

シンプルな定義だが、食文化の奥深さもうかがえる。 食文化の理解には、まずアフリカの多面性を知り、その多様性の淵源を探究することではないか。西アフリカには、歴史的にヨーロッパとの交易を示す胡椒海岸、象牙海岸、黄金海岸、穀物海岸、奴隷海岸の名が残されており、長い植民地時代があり、アラブやヨーロッパの影響を受け入れたことと、かたくなに土着の文化性を継承する食文化が形成されている。実に興味深い。そうそう21日にスポーツニュースの話題をさらったNBA指名の八村選手、そしてテニス界の女王・大阪なおみ、陸上短距離日本新のサニブラウン・ハキームら、平成生まれ3人の父方ルーツは西アフリカである。彼らの好物、牛丼やカツ丼はかの地で流行るだろうか?

謝 辞

P.ベアイ氏は国際平和活動に将来のキャリアをかけている。当イベントへの協力に感謝するとともに今後のご活躍を祈りたい。奇しくも20日はUNHCR「世界難民の日」で、世界中でイベントが行われていた。そして、ロータリークラブの野口四郎氏、通訳の筑波大研究者・宇野かおりさんに、心からの感謝を申し上げたい。